出逢いは「9.11」と「トカゲ」から

第1章 出逢いは「9・11」と「トカゲ」から

 糖尿病治療の常識をくつがえす物質「インクレチン」のことは、私はかねてから知っていました。糖尿病の研究者や医者であれば、誰もが知っている名前です。

 2001年に、私はインクレチンとの“新たなる出逢い”を果たしました。

 英国スコットランドの南西にグラスゴーという都市があります。人口は50万人ほど、スコットランドでは最大の街で、歴史を感じさせる教会や博物館などが見られます。また、グラスゴー大学という、1451年に創立されたスコットランドで2番目に古い大学もあります。

 01年9月8日から、このグラスゴーで「欧州糖尿病学会」という大きな学会が開かれました。学会は、研究者や医師が研究の成果を発表したり、互いの研究を情報交換したりする大切な集まりです。私も、糖尿病についての最新の知見を得るため、国内外問わず、時間があるときはなるべく学会に参加するように心掛けています。

 学会の4日目、私は学会の会場を訪れ、建物の中に入りました。すると、会場の中の人々が、食い入るように大型スクリーンのほうを見ていました。私も、人々の視線の先にある画面を見ると、戦争映画のような映像が流れていました。ビルに向かって飛行機が突っ込み、火柱を上げています。「なぜ、学会で映画が流れているのだろう」。

 よくわけのわからぬまま、しかたなく、私は隣の会場へと場所を移しました。こちらの会場にも大型スクリーンが用意されています。スクリーンには、今度はまだら模様のトカゲの写真が大きく映し出されていました。私はぽかーんとなりました。「戦争映画にトカゲ写真。いったいこの学会はどうなっているんだ……」。

 最初の「戦争映画」については、すぐにことの真相がわかりました。学会の4日目は、9月11日。世界に衝撃を与えた、米国同時多発テロ事件が起きた日です。学会の会場でも緊急に、マンハッタンの世界貿易センタービルに飛行機が突っ込むニュースを流していたのです。

 一方、「トカゲの写真」のほうは糖尿病と深く関係したものでした。

 その学会の会場でわかったことですが、このオオトカゲは日本名で「アメリカドクトカゲ」というトカゲでした。米国の南西部やメキシコあたりで生きている体長50センチほどのトカゲで、名前のとおり毒を持っています。米国南西部を流れるヒーラ川という川で見られたことから「ヒーラ・モンスター」、つまり「ヒーラ川の怪物」とも呼ばれています。私が見ても、欧米人が見ても、おどろおどろしさを感じることには変わらないみたいです。

 私を含め、会場に居合わせた研究者たちが注目したのは、この毒々しいトカゲそのものというよりむしろ、トカゲが出す唾液のほうでした。

 この学会が行われたのは2001年でしたが、さかのぼること9年前の1992年、米国のマサチューセッツ・ゼネラル病院に勤務していたジョン・エングという内分泌研究者が、こんな発見をしました。「アメリカドクトカゲからとれる唾液の成分が、ある種のインクレチンの構造とよく似ている」。

 インクレチンというホルモンは何種類かありますが、いずれも複数の分子がつながったアミノ酸でできています。エングは、インクレチンの一種のアミノ酸の配列と、アメリカドクトカゲの唾液の成分のアミノ酸の配列を比べてみました。すると、配列の異なるところもありましたが、52%は同じ配列をしているとわかったのです。

 アメリカドクトカゲの唾液から発見されたこの物質は「エキセンディン-4」(Exendin-4)と呼ばれます。つまり、トカゲの唾液のエキセンディン-4と、インクレチンの一種は、半分以上かたちが似ているということになります。

「9・11」が起きた日、グラスゴーの学会では、このエキセンディン-4とインクレチンに関する発表が行われていたのです。おどろおどろしいアメリカドクトカゲが大画面に映されていてもいたしかたありません。

 そもそも、「トカゲの唾液とインクレチンの一種の構造がよく似ている」ことのどこに、学会で紹介されるほどのすごさがあるのでしょう。これを知っていただくには、「インクレチンの一種」が何物なのか、その正体を説明する必要があります。

 糖尿病の知識を得るため本やインターネットをご覧になった方は、「インスリン」という言葉ならよく見かけると思います。一方、「インクレチン」という言葉は、インスリンほどは見かけないと思います。しかし、インクレチンも糖尿病の研究の歴史の中で、古くから注目されてきた大切な物質です。

 もう100年以上前になりますが、1906年、糖尿病の患者を対象にした、ある研究が行われました。人の腸の中にある液体を体の外に抽出して、糖尿病の患者の体内に投与するというものです。この液体を投与された患者は、尿に含まれる糖の量が減ることがわかったのです。

 糖尿病になると、血糖値が高い状態が続くほかに、尿中の糖の量も多くなります。古代インドの文献には「患者の尿にアリが集まった」という記録もあり、これが「糖尿病」という名の由来とされています。

 1906年の試験では、まず、腸から抽出した液体に、糖尿病の患者の尿中の糖を減らす効果があることがわかったのです。

 この試験の後も、研究者たちはこの謎の液体をいろいろと調べました。当時すでに、膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンが、血液中のブドウ糖の量を減らすことがわかっていました。そこで、研究者たちは「どうやら腸の中の液体は、膵臓のβ細胞に対して、インスリンを分泌するよう働きかけているようだ」と考えるようになりました。そして、1932年、ジャン・ラ・バールというベルギーの生理学者たちが、膵臓にホルモンを分泌するよう促す物質のことを「インクレチン」と呼ぼうと提唱したのです。インクレチンは、英語で表すと“INCRETIN”となります。この言葉は、“IN”と“CRET”と“IN”に分解することができます。それぞれ“INtestine”つまり「腸」、“seCRETion”つまり「分泌」、“INsulin”つまり「インスリン」というそれぞれの言葉の一部分をとったもので、つなげると「腸から分泌されるインスリン」となります。インクレチンは、本当は腸から出てきて膵臓へと向かい、インスリンの分泌を働きかけるホルモンですが、比喩的に「腸から分泌されるインスリン」と名付けられたようです。

 インクレチンが、不思議な性質を持った魅力的なホルモンであるということがわかってくるのはこの後です。1964年、ニール・マッキンタイアとハロルド・エルリックという二人の人物がそれぞれ独自に、インクレチンに関する興味深い効果を、研究チームの仲間たちとともに研究成果として発表しました。

 この研究では、被験者にブドウ糖を体の中に取り入れてもらいます。その方法は二つ。口から入れる方法と、注射で静脈から入れる方法です。どちらも、体内にブドウ糖が取り入れられるという点は同じですが、はっきりとした違いも見られたのです。それは、「口からブドウ糖を摂取したときのほうが、膵臓から分泌されるインスリンの量が多くなる」というものでした。つまり、ブドウ糖を点滴で取り入れるよりも、飲み込むほうが、血糖値を抑えるインスリンがたくさん出てくる、というのです。この意味を示すグラフをご覧いただければ、一目瞭然だと思います[図1-1]。

 どのような違いによって、“口から”のほうがインスリンが多く分泌されるのでしょうか? 点滴でブドウ糖を注入した場合、ブドウ糖は被験者の消化管を通ることはありません。一方、口からブドウ糖を飲み込めば、ブドウ糖は食道、胃、十二指腸、小腸といった具合に消化管を通ることになります。

 どうやら消化管のどこかに「食べ物が入ってきたぞ」と反応して、「もしもし膵臓のβ細胞ですか、ブドウ糖が入ってきたのでインスリンを分泌してください」と、指示を送るしくみがあるようです。

 このしくみは、「どうやら腸の中の物質は、膵臓のβ細胞に対して、インスリンを分泌するよう働きかけているようだ」と考えられてきた物質、すなわちインクレチンの働きと同じです。そこで「口からブドウ糖を取るほうが、静脈注射でブドウ糖を取るよりも、インスリンの濃度が高くなる」という効果を「インクレチン効果」と呼ぶようになりました。

 実は、この時点で「腸の中にインクレチンは確実にある」ということはわかっていながらも、「この物質がインクレチンだ」という具体的な物質が発見されていたわけではありません。

 その発見は、まず、1970年にありました。胃が分泌する酸を抑制する「胃酸分泌抑制ペプチド」(GIP:Gastric Inhibitory Polypeptide あるいは、Glucose-dependent Insulinotropic Polypeptide)という物質が、実はインクレチンであるということが、カナダのジョン・ブラウンによって明らかになったのです。

 ただし、こう言っては申し訳ありませんが、GIPというインクレチンは本書では“端役”といいますか、極端な話、みなさんには覚えていただかなくても大丈夫な物質です。というのも、糖尿病の患者さんにGIPを投与しても、インスリンの分泌を促進する効果は少ししかないからです。

 この後、1986年に、いよいよ“本命”のインクレチンが発見されることになります。バーンハード・クレイマンというデンマークの研究者が、小腸の細胞から分泌されている「グルカゴン様ペプチド-1」(GLP-1)という物質を発見しました。そして翌1987年、人が持っているGLP-1がインクレチンの一種であるということを突き止めたのです。これで、インクレチンはGIPとGLP-1の2種類になりました。いまインクレチンであるとわかっているのはこの2種類です。

 では、あらためて、本書での“本命”である「GLP-1」というインクレチンが、どのような物質であるかを紹介していきます。

「GLP-1」は、“Glucagon-Like Peptide-1”、つまり「グルカゴン様ペプチド-1」を略したものです。「グルカゴン」と「ペプチド」という言葉が新しく登場しました。

 まず、グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島でつくられるホルモンです。序章でお話ししたように、ランゲルハンス島にはβ細胞があってインスリンが分泌されますが、対してグルカゴンはインスリンと真逆のような役割をします。ランゲルハンス島のα細胞という細胞からグルカゴンは分泌されます。そして、血糖値が下がって糖が必要になったとき、肝臓の細胞に「ブドウ糖をもっと供給してください」と働きかけます。まるで逆の役割を持ったグルカゴンが、インスリンと隣り合わせで分泌されるのは驚きですが、おそらく緊密な連携をとっているのでしょう。

 一方ペプチドは、ここでは、決まった順番で様々なアミノ酸がつながってできた分子のことをいいます。そういっても難しいので、「化合物」あるいは「物質」と考えていただければ結構です。

 また、「様」(Like)は「同じような」の意味ですし、「1」は、つくりが似た物質と区別するための数字です。

 以上をまとめると、「GLP-1」は、「グルカゴンと同じような化合物、その1」とでもいった意味になります。では、何がグルカゴンに似ているのでしょうか。まず、GLP-1は、インクレチンの一種なのですから、血糖値を下げるインスリンの分泌を促すことが挙げられます。これは、血糖値を上げる役割をするグルカゴンとはむしろ反対といえます。ここでの「同じような」は、この物質をつくる遺伝子の配列に対してのもの。つまり、「グルカゴンと同じような遺伝子配列をした化合物」という意味が込められています。

 説明が少し長くなりましたが、「GLP-1は『グルカゴン様ペプチド-1』と名前が付いていても、役割はインスリンの分泌を促すものだ。つまりインクレチンだ」とだけ覚えていただければと思います。

 GLP-1の優れている特徴は様々あります。GLP-1は、知れば知るほど優れた働きをする物質であることがわかりますが、ここでは、特に重要な四つの特徴を紹介したいと思います。

 第一に、何といっても重要なのは「血糖値に合わせてインスリンを分泌する」という特徴です。GLP-1はインクレチンなのでインスリンを分泌させますが、血糖値が上がったときだけ、膵臓のβ細胞に「インスリンを出してください」と働きかけるのです。逆に、血糖値が正常なときは何も働きかけず、インスリンの分泌を促すようなことはしません。GLP-1を、「臨機応変な対処が得意な、インスリン製造工場のマネージャー」に喩えることができます。ブドウ糖が食べ物から取り込まれていないときは、β細胞に指示は出ず、ブドウ糖がたくさん取り込まれたときは「これは大変。インスリンをつくる準備をしてください」と指示を出します。しかも、小腸から膵臓へという遠隔指示です。

 次に、二番目として「グルカゴンの分泌を抑制する」という特徴もあります。先ほど紹介したように、グルカゴンは、インスリンと正反対に血糖値を上げるホルモンです。GLP-1は、膵臓のα細胞に対して「グルカゴンをつくるのを抑えてください」という働きかけもします。この働きかけによって、無用な高血糖を抑えることができます。GLP-1というマネージャーは、インスリン工場を管理しているだけでなく、グルカゴン工場にも指示を出しているというわけです。

 三番目として「β細胞を増生する」という、たいへん興味深い特徴もあります。GLP-1というマネージャーは、β細胞にインスリンをつくれという指示を出すだけでなく、なんとβ細胞というインスリン製造工場そのものを“建て増し”しているかもしれないのです。これを私は「増生」という言葉で表現しています。β細胞が増生するということは、つまりインスリンを分泌する細胞が増えるということですから、もちろん血糖値を下げるのにプラスに働くことは言うまでもありません。実際、GLP-1を働きやすくさせるようにし向けたラットで、β細胞の量が多くなっていることを確認した動物実験も報告されています。

 最後に四番目として「腹八分目で抑える」という、これまたとても興味深い特徴があります。GLP-1が、脳の「食欲中枢」という部分に「もうお腹いっぱいですから」という情報を伝えている可能性があるといわれています。食欲中枢は「お腹が空いたぞ」という感覚を生み出す脳の司令室のようなもの。この食欲中枢に対して、GLP-1が「いや、もうお腹いっぱいですから」と伝えているのです。実際にGLP-1は、腸の下の方から出るので、食べ物が十分に届いていることを脳に知らせていると考えると納得ができます。その結果、“腹八分”で食事を抑えることができるようになると考えられています。つまり、GLP-1が働けば、苦労しないでも自然にダイエットができるようになるわけです。臨床の研究でも、GLP-1を働きやすくさせるようにし向けると体重が減ったという報告があります。

 以上をまとめると、GLP-1は「血糖値に合わせてインスリンを分泌する」「グルカゴンの分泌を抑制する」「β細胞を増生する」「腹八分目で抑える」という特徴を持っていることになります。GLP-1は、β細胞に指示を出すだけでなく、工場を建て増し、さらにα細胞や脳にも連絡をするという、本当に有能なマネージャーであることがわかってきました。

 いずれの特徴にも共通するのは、「糖尿病を治すという点でプラスに働く」ということです。インスリンの分泌を促したり、グルカゴンの分泌を抑えたりすることは血糖値を程よく維持することにつながります。β細胞が増生することももちろん同じです。さらに、太っている人では、体中の脂肪細胞の量が多いために、このことがインスリンを効きづらくさせていることもわかっています。自然にダイエットをする働きで痩せれば、体中の細胞はインスリンに対して敏感になります。これも、糖尿病をコントロールするのにプラスに作用しているわけです。

 ほかにも、GLP-1の特徴はまだ様々ありますが、これからのお話の中で「こんな特徴もある」と、その都度、紹介していきたいと思います。

 GLP-1というインクレチンの優れた特徴をこのようにお話しすると、みなさんは、こんな疑問を抱かれたかもしれません。

「GLP-1は、誰もが腸に持っているのでしょう。であれば、なぜ糖尿病や予備群の人がこんなにもたくさんいるのですか」

 たしかに、紹介したようなGLP-1の役割がうまく機能すれば、血糖値を低くすることができるでしょうから、これだけ多くの人が糖尿病になることはないはずです。

 実はGLP-1という有能なマネージャーは、ある重大な弱点も持っているのです。それは、「あっという間に消えてなくなってしまう」という弱点です。食べ物が口から取り入れられて腸管を通ると、GLP-1の出番となります。このGLP-1がマネージャーとしていろいろ働こうとするわけです。ところが、食べ物が腸管を通ってから、1、2分も経たないうちにGLP-1はすぐに半分まで消えてしまうのです。膵臓のβ細胞に働きかけるかどうかというときには、もう大半が消えてなくなってしまっているのです。GLP-1は、有能な力を持っていながら、あっという間にいなくなってしまう、何とも特殊なマネージャーだと言えます。

 しかし、前向きに考えてみるとどうでしょう。あっという間に消えてしまうGLP-1を、どうにかして消えさせないようにできれば、先ほど紹介したような数々の素晴らしい特徴をGLP-1は長い時間にわたって発揮してくれるはずです。

 実は、そのしくみを持たせたものこそが、この本でみなさんにお伝えしたい新薬なのです。この新薬については、次の第2章でじっくりと紹介させていただきます。

 さて、2001年9月11日、グラスゴーの欧州糖尿病学会で「アメリカドクトカゲ」がスクリーンに大きく映されたという冒頭のお話を覚えていただいているでしょうか。このアメリカドクトカゲの唾液にある「エキセンディン-4」(Exendin-4)という成分と、「インクレチンの一種」の構造がよく似ていることが、研究者に注目されていたというお話でした。

 この「インクレチンの一種」こそが、有能なマネージャーであるGLP-1というわけです。

 GLP-1に構造が似ていることがわかってから、エキセンディン-4そのものについての研究も進みました。エキセンディン-4には、哺乳類のGLP-1が働くためのスイッチをオンにする作用があることもわかっています。「GLP-1受容体」という、GLP-1がカチッとはまる細胞の鍵穴のようなものに強力に作用することが確認されたのです。

 GLP-1に似た構造をしていれば、当然、「どうにか薬にして、糖尿病患者の治療に役立てたい」と考えるのが研究者や製薬企業です。トカゲの唾液とGLP-1の構造が似ていることを発見したジョン・エングの業績を活かすべく、米国の製薬企業はバイオテクノロジーの研究成果と組み合わせて薬の開発に取り組みました。そして、エキセンディン-4の化合物である「エキセナチド」という薬の販売が、米国では2005年から始まりました。製品名は「バイエッタ」です。

 振り返ってみると、私はグラスゴーで「毒トカゲの唾液が糖尿病治療に活かせそうだ」という話を初めて耳にしたとき、「本当に毒トカゲの唾液の成分から、薬なんて生まれるのだろうか」と正直思っていました。

 日本には「ガマの膏」という言葉があります。ガマガエルの分泌液を含めた薬のことで、やけど、あかぎれ、切り傷などに対して広く効くとされました。しかし、縁日などで露天商が「何にでも効きますからね」と宣伝したことで、「ガマの膏」は「効き目の怪しい薬」という意味の言葉になりました。

「毒トカゲの唾液から糖尿病の薬を」という話を耳にしたとき、私がまず思ったのは「ガマの膏ではないか」ということでした。しかし、米国で新薬としてエキセナチドが発売されたということを聞き「ああ、これはいい薬になるな」と、思いを改めるようになってきました。この本では、エキセナチドのことはあまり触れませんが、日本では2009年8月に製薬会社が、国に対して薬を製造・販売するための承認申請をし、2010年10月に製造承認申請が認可されて、おそらく2011年の初めから、臨床現場で使用できることになりました。

 グラスゴーでの学会は、私にとっては「9・11同時多発テロ」と「アメリカドクトカゲ」という二つの衝撃を覚えた印象的なものとなりました。

 私の糖尿病の研究者・治療医としての歩みを振り返ってみても、2001年9月11日は、大きなターニングポイントだったといえます。私にとっての「GLP-1」との出逢いの日であり、このGLP-1の存在に注目したことで、第2章以降で紹介する夢の新薬に携わることができるようになったのですから。

 それから、なんと本書を執筆している今(2010年10月)、「バイエッタ」が製造承認され、日本での発売が決まった、というのも、私にとっては本当に偶然が2回起こった、という印象があります。私とGLP-1との間に、運命の赤い糸があるような気がしています。

朝日新聞出版、書籍 こんなによくなる!糖尿病 驚きの「インクレチン」新薬効果 朝日新聞出版、書籍 こんなによくなる!糖尿病 驚きの「インクレチン」新薬効果 2010年初版、著者:鈴木吉彦、23から37ページより、引用転載

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この記事を書いた人

鈴木吉彦医学博士。糖尿病分野で名医ランキング2016〜2023まで、常に掲載。Best Doctor  慶応大学医学部卒。
元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。
毎月通院糖尿病患者数1000名以上の糖尿病外来と併行しGLP1ダイエット外来の運用責任者
英文論文は沢山:IP:400以上。70冊以上の書籍の出版経験をもつ。累計100万部以上の書籍を出版。主たるサイト:
ホームページはここをクリック
https://www.glp1.com/
GLP1製剤「サクセンダ」について解説。未承認のGLP1製剤については、その危険性についても解説。現在、世界で最も注目されている糖尿病+肥満(Diabesity)やメタボ+肥満(Metabesity) を専門とする内科医師。
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