第6章 食後高血糖は「酸化ストレス」を増やし、がんを増やす可能性も

糖尿病予備軍こそ治療を受けなさい」主婦の友社 68~74ページ 平成22年4月30日 第1刷 ©︎医学博士 鈴木吉彦

「酸 化 ス ト レ ス 」 は 体 中 を 傷 つ け る

生体の酸化反応と抗酸化反応 のバランスが崩れ、酸化反応 のほう に傾き、生体 にと って好ま しくない状態になった場合を 「酸化ストレスがある状態」といいます。

「活 性 酸 素 が 増 え る よ う な 状 態 」 で は 、 「酸 化 ス ト レ ス が 強 ま る 」 こ と が 知 ら れ て い ま す 。 で すから 「酸化ストレスとは、活性酸素が増える状態とほぼ同じ意味」で使われることが多いわ けです。

酸 化 ス ト レ ス は 、 遺 伝 子 、 細 胞 膜 上 の リ ン脂 質 、 糖 質 、 タ ン パ ク 質 を 傷 害 さ せ た り 、 血 管 障 害を重悪させることが知られています。その際、「活性酸素」が重要な悪さをもたらし、体内 で、 核酸、脂質、糖質、タ ンパク質などを酸化変性させることによ って、細胞機能 の悪化に つなが り ま す 。 糖 尿 病 で は 、 酸 化 スト レ ス が た ま り や す い、 活 性 酸 素 が 増 え や す い、 と いう こ と が 知 られています。

呼吸で取り込んだ酸素の1〜2%は悪玉酸素 「活性酸素」になる

酸素は周囲のものを酸化させる性質を持 っています。呼吸によって体の中に取り入れられた 酸素も、空気中の酸素と同様に、体内で遺伝子や細胞を酸化させ、健康に悪影響を与えるよう になります。このような悪玉酸素を活性酸素といいます。

呼吸によって体内 に取り込まれた酸素 の1〜2%が活性酸素 に変わると いわれていますが、 こ れ ら の 活 性 酸 素 は も と も と 人 間 の身 体 に 備 わ っ て い る 抗 酸 化 物 質 に よ っ て 無 害 化 さ れ 、 活 性酸素の害から体が守られています。 一般的に活性酸素は、激しいスポーツ、タバコや車の排気ガス、大量の紫外線、農薬などの

化学物質、食品添加物の大量摂取、ストレスなどによって起こるとされています。そして、動脈硬化、自内障などの促進につながるとされているのです。

糖尿病では酸化ストレスを除去しにくい

活性酸素と結合して解毒する機能を持つ物質のことを英語でスカベンジャーと呼びます。体 内にはSOD (スーパーオキシドディスムターゼ)、カタラーゼ、グルタチオンなどのスカベ ンジャーがあります。しかしスカベンジャーの産生能力は加齢とともに低下するので活性酸素は年齢とともに増えてきますスカベンジャー作用を持つ物質は食物にも含まれています (有名なものではビタミンC、ビ タ ミ ン E 、 β l カ ロ テ ン な ど で す )。

スカベンジ ャーは何種類も存在し、それらが相補関係を保ちながら作用します。そ のため、 体 内 で作 ら れ る 分 だ け でな く 、 食 物 か ら 抗 酸 化 作 用 物 質 を 取 り 入 れ 、 活 性 酸 素 の発 生 を 最 小 限 にすることが大切 です。体内 で産生するスカベンジ ャーが減 った分を、食物から多く摂取するのが望ましいのです。

糖 尿 病 の 場 合 に は 、 こう し た ス カ ベ ン ジ ャ ー 機 能 が 、 過 剰 な 糖 に よ っ て 変 成 を 起 こ し て き ます 。 そ の せ い で ス カ ベ ンジ ャ ー 機 能 が 低 下 し ま す 。 食 後 局血 糖 が あ る と 、 活 性 酸 素 を 解 毒 す る 酵 素 に も 悪 影 響 を 及 ぼ し て 、 活 性 酸 素 を さ ら に 増 や す と いう 悪 循 環 を 作 り や す く し て し ま う のです。

グルコーススパイクが酸化ストレスを増加させる?

食後昌血糖と心臓疾患への関係ははっきりしていますが、それではなぜ食後局血糖が血管の 内側の細胞 (血管内皮細胞と言います)を傷つけるのでしょうか。

このことは動物実験レベルでわかってきました。特に細胞レベルでは、血管内皮細胞を、正常血糖値→高血糖→正常血糖値、と交互にした津波のような状態を作ったとしましょう。グルコース (ブドウ糖)のスパイク (津波)状態を実験的に作りだしたのです。その結果、グルコーススパイクを作ったほうが、慢性的に高血糖を起こしていた状態よりも、血管内皮 の傷害が強く、死滅した細胞数が増えることが判明しました。

こうした実験は、臨床の場で証明されたも のではありませんが、それでも、ブドウ糖 スパイクがあるほど動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞などの心血管イベントが起こりやすいことの証拠のひとつになります。

食後高血糖が 「がん」の発生を増やす可能性

活性酸素は遺伝子に対して障害を及ぼすことがあります。そのためかどうかは不明ですが、食後高血糖 は膵臓がんの発症 に関与している可能性があるとされ ています。成人男女 3万5658例を対象とした研究の結果、膵がんの死亡率と、食後 (負荷後)血糖値との間には強い関係が認められたのです。

負荷後 の血糖値が200mg/dlを超えた場合には、膵がんの発症は2倍以上にもなります。 特に、男性でこの関係が強く認められました。同様 の研究はほかにもあり、食後高血糖が膵がんの発生を増やす可能性があります。

ただし、この研究 の結果は、鶏と卵 の関係かもしれません。膵がんになれば、糖尿病になり やすくなります。

もともと、調査時には発見できないような微少な膵がんが潜んでいる可能性があれば、その 人 は 食 後 高 血 糖 を 起 こ し や す いグ ル ー プ に 入 っ て し ま っ て い る こ と が あ る わ け で す 。 だ か ら 、 食後高血糖 のグ ループには、膵がんが含まれやすく、膵がんの発症が増えてしま っているようにみえる可能性もあります。

しかし、いずれにせよ、糖尿病になると、さまざまながんになりやすいことは知られています。糖尿病になる前の段階の、食後高血糖があるだけの段階、 つまり境界型糖尿病であるだけでも、肥満がある場合には、肥満とがんとの関係を心配したほうがよいでしょう。

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この記事を書いた人

鈴木吉彦医学博士。糖尿病分野で名医ランキング2016〜2023まで、常に掲載。Best Doctor  慶応大学医学部卒。
元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。
毎月通院糖尿病患者数1000名以上の糖尿病外来と併行しGLP1ダイエット外来の運用責任者
英文論文は沢山:IP:400以上。70冊以上の書籍の出版経験をもつ。累計100万部以上の書籍を出版。主たるサイト:
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https://www.glp1.com/
GLP1製剤「サクセンダ」について解説。未承認のGLP1製剤については、その危険性についても解説。現在、世界で最も注目されている糖尿病+肥満(Diabesity)やメタボ+肥満(Metabesity) を専門とする内科医師。
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